プログラム

大会スケジュール(予定)

5/25(土)
  10:00 オンライン大会講演
  11:30 昼休み
  12:00 オンライン総会
  13:00 オンラインシンポジウム オンライン講習会
  15:10 オンラインコメントセッション

5/26(日)
  10:00 対面シンポジウム等 
  12:00 昼休み(12:10-12:50 ランチョンワークショップ
  13:00 対面ポスターセッション
  15:15 対面講習会
  (17:15 終了予定)

主な大会実行委員会企画

大会講演:移境態の記号論的文化心理学;Semiotic Cultural Psychology of Liminal Experiences

日時:5月25日10:00-11:30(予定)
講演者:Zachery Beckstead(ブリガムヤング大学ハワイ校准教授)
司会/解説:サトウタツヤ(立命館大学)
概要:Liminality is a core concept in semiotic developmental cultural psychology (Valsiner, 2014). Along with related concepts such as ruptures (Zittoun), transitions, and trajectories along the life course (Sato et al., 2014), liminality draws our attention to the open-ended, processual nature of psychological phenomena. This presentation aims to elucidate the theoretical and empirical potential of liminality by drawing on the ideas of Arnold van Gennep (1908), Victor Turner (1979) and Paul Stenner (2017, 2021) and bringing their ideas into contact with semiotic developmental psychology. Critically, liminality provides a lens through which we can explore the processes enabling socio-psychological transformations and the emergence of new trajectories and can also be fruitfully linked with the concept of catalysis Cabell and Valsiner, 20214; Beckstead, 2021). This presentation will explore the theoretical possibilities of liminality in relation to the wide-spread religious and cultural practice of pilgrimage (Turner and Turner, 1979; Beckstead, 2021). This presentation aims to demonstrate how TEA and liminality when in dialogue can lead to new theoretical insights for semiotic cultural psychology.

移境態(Liminality)は時間・空間における何かと何かの間の境にある (いる) という状態を指し、記号論的発達文化心理学の中核概念である(Valsiner, 2014)。ラプチャー(Zittoun)、移行、人生径路(Sato et al., 2014)といった関連概念とともに、移境態は心理現象のオープンエンドでプロセス的な性質に注意を向けさせる。本発表では、Gennep(1908)、Turner(1979)、Stenner(2017、2021)の考えに依拠しつつ、彼らの考えを記号論的発達心理学と接触させることで、移境態の理論的・経験的可能性を解明することを目指す。重要なのは、移境態が社会心理学的な変容(Transformation)と新たな人生径路の出現を可能にするプロセスを探求するためのレンズを提供し、触媒作用の概念とも有益に結びつけることができるということである(Cabell and Valsiner, 2014; Beckstead, 2021)。 本講演では、巡礼(Turner and Turner, 1979; Beckstead, 2021)という広く普及している宗教的・文化的実践に関連して、移境態の理論的可能性を探る。さらに、TEAと移境態が対話することが、記号論的文化心理学にとって新たな理論的洞察を生むことを示していく。

大会シンポジウム:「TEAの近年の理論的展開と今後の可能性」

日時:5月26日10:00-12:00(予定)
司会:
 大川聡子(関西医科大学)
話題提供者(一部変更がありました5/3):
 土元哲平(中京大学) オートエスノグラフィ+TEA
 香曽我部琢(宮城教育大学) 山脈的自己
 中田友貴(立命館大学)  徹底的行動主義に基づく分岐点分析
指定討論:
 サトウタツヤ(立命館大学)
 三代純平(武蔵野美術大学)

概要
 複線径路等至性アプローチでは、各研究者独自の工夫が求められる。そのため、さまざまな理論が次から次へと提案されている。変化を続けるTEAの多様な理論を整理し、各研究者がそれらを利用しやすく、また全体を見渡す中で、独自の新しい理論を提案しやすくする、というのが、本企画の目的である。そのために、3名の話題提供者が、自身がTEAに加えた新しい理論を紹介してもらい、それらを指定討論者が整理し、それに基づいて未来への地図を示すことを目指す。

講習会/ワークショップ

オンライン講習会1:TEAのいろは―TEMの基礎を学ぼう―

講師:安田裕子(立命館大学)
日時:5月25日 13:00-15:00(予定)
概要:複線径路等至性アプローチ(Trajectory Equifinality Approach:TEA)は、過程と発生をとらえる質的研究の方法論である。TEAは、文化心理学に依拠し、文化的存在である人の発達や人生径路を描出する方法「複線径路等至性モデリング(Trajectory Equifinality Modeling:TEM)」が、その原点にある。TEMは等至性(Equifinality)の概念を発達的・文化的事象に関する心理学研究に組み込もうと考えたヤーン・ヴァルシナー(2001)の創案にもとづく。等至性の概念では、人間は開放システムととらえられ、歴史的・文化的・社会的な影響を受け多様な軌跡を辿りながらも、ある定常状態に等しく(Equi)到達する(final)存在(安田, 2005)とされる。TEMでは、研究目的に照らして等至性を具現化する選択や行動を等至点として焦点化し、等至点に至りそこから持続する人間発達や人生径路の多様性・複線性、潜在性・可能性を、非可逆的時間と文化的・社会的な諸力とともにとらえる。本講座では初学者向けのものである。ペアワークを通じて体験的に学ぶ。
引用文献
Valsiner, J., (2001).Comparative study of human cultural development, Madrid: Fundacion Infancia y Aprendizaje.
安田裕子.(2005).不妊という経験を通じた自己の問い直し過程―治療では子どもが授からなかった当事者の選択岐路から.質的心理学研究,4,201-226

対面講習会:TEAとインタビュー

講師:徳田治子(高千穂大学)
日時:5月26日 15:15-17:15(予定)
概要:インタビューは、質的研究における主要なデータ収集法として位置づけられます(クヴァール, 2016/2007)。この講習会では、まず、質的研究におけるインタビュー法の基礎として、研究方法の選択、質問項目の設定、さまざまな質問技法、データ分析の基本的な考え方と実施方法について学んでいきます。また、近年、質的研究を実施する上で、「方法論的整合性」の重要性が指摘されています(レヴィット, 2023/2021)。そこで、後半では、特に「方法論的整合性」の観点から、質的研究におけるTEM/TEAの特徴や位置づけを整理しつつ、インタビュー法を用いてTEM/TEA研究を行う際の留意点について、参加者の皆さんとも議論を交えながら、学んでいきたいと思います。質的研究の初学者、これからインタビュー法を用いた研究をしたいと思っている方、実際にインタビュー法を用いたTEA研究を検討している方などの参加を想定しています。
引用文献
クヴァール, S. (2016). 質的研究のための「インター・ビュー」(SAGE質的研究キット2)(能智正博・徳田治子, 訳).(Kvale, S. (2007) Doing interviews (Sage Qualitative Research Kit 2). SAGE.)
レヴィット, H. M. (2023). 心理学における質的研究の論文作法−APAスタイルの基準を満たすには(能智正博・柴山真琴・鈴木聡志・保坂裕子・大橋靖史・抱井尚子, 訳). (Levitt, H. M. (2021) Reporting qualitative research in psychology: How to Meet APA Style Journal Article Reporting Standards. The American Psychological Association.)

対面講習会:よりよい質的研究論文を書くために:APAの質的研究論文執筆基準の功罪

講師:能智正博(東京大学)
日時:5月26日 15:15-17:15(予定)
概要:質的研究の評価基準は量的研究と比べて明示化しにくい部分があるが、そんななか、2020年に改訂されたアメリカ心理学会(APA)の論文執筆マニュアルには、量的研究と並んで質的研究の論文執筆基準も掲載された。これは質的研究を評価するための土台となる共通の枠組みを提供したものでもあり、ある意味で画期的とも言える。これを目安として初学者が質的研究論文の質をより高めていくことも可能であろう。ただそこには限界もあり、この基準をどのように使っていくかについてはまだ議論が必要と思われる。この講習会では、H.レヴィットの解説書(邦訳2023)なども参照しつつ、APA基準の具体的内容を紹介し、具体的な論文執筆における適用可能性を探り、同時にその限界についても考えてみたい。


研究交流委員会企画対面ワークショップ「hana-TEM アートで描くわたしの径路」

日時:5月26日(日) 15:15-17:15(対面)
企画:研究交流委員会(中坪史典・加藤望・上川多恵子・土元哲平・中本明世)
概要:このワークショップは、アートによって人生径路を描くワークを実際に体験しながら参加者同士が交流できる場です。具体的には、花や石などの素材を用いてTEMを作り(hana-TEMと呼びます)、それをもとに他者と交流することになります。人と話すのが苦手、自分自身のことについて言語化するのは苦手、という方でも大丈夫です。ことばにする必要はありません!「さまざまな作品を眺め、感じ、浸る」ことによる共感、ないし他者の感覚と関わることを大切にします。hana-TEMは、TEMの基本的なスキームを活かしながらも、言語にこだわらずに、人生径路における「曖昧さ」や「複雑さ」をより豊かに表現することを目指します。hana-TEMを作成したり、他者と交流することは、自分自身の癒やしになります。また、芸術を通して自己・他者との対話や内省を深める効果も見込まれます。 皆様のご参加をお待ちしております。
関連文献:土元哲平・上川多恵子・中本明世・加藤望・中坪史典,(2024) 「hana-TEM:アートで描くわたしの径路」:TEAと質的探究学会第2回大会・研究交流委員会企画ワークショップ. 質的研究と社会実装,立命館大学ものづくり質的研究センター紀要, 創刊号, pp. 1~12
※ワークショップ参加者は事前に下記から参加登録をお願いします。
https://forms.gle/kihGahUWH8uCdLdq5
※このワークショップに関する問い合わせは、大会事務局ではなく、下記の研究交流委員会までお願い致します。
問い合わせ先:研究交流委員会 中本明世 nakamoto@konan-wu.ac.jp


大会実行委員会企画対面ワークショップ「TEM × アートベースドリサーチ」

日時:5月26日(日) 15:15-17:15(対面)
企画:大会実行委員会
講師:ヤン・シンイ(武蔵野美術大学)×荒川歩(武蔵野美術大学)
概要:アートベースドリサーチとは、アートを媒介として探究を行う研究活動である。武蔵野美術大学クリエイティブイノベーション学科では、積極的に、この方法を用いている。
そこで、本ワークショップでは、写真を使ったアートベースドリサーチとTEMの融合を試み、市ヶ谷という過去と現在が入り混じった土地を舞台に、参加者とともに、街の記憶をチェキを片手に写し取り、街が果たした複数の機能や光景の径路を描き出すことにチャレンジする。これにより、TEMの新しい可能性や気づきを得ることを目指す。
参加者は大会参加申し込みののち、下記から要事前申し込みください
https://forms.gle/LL7zNPRt3CLF7F3G9
関連文献:パトリシア・リーヴィ(編)岸磨貴子・川島裕子・荒川歩・三代純平(編訳)(近刊)アートベースリサーチ・ハンドブック 福村出版