第3回大会のご挨拶

 美大の新学科に移籍したとき、「デッサンというのは描く対象と時間をかけて関わるための方法なのだ」と教えてもらいました。たしかに、認識するだけであれば、「人だ」「○○さんだ」で終わってしまいますが、デッサンするとなると時間をかけて向き合い、ただ認識するだけであれば気づかなかった多くのことに気づき、多くのさまざまな可能性に思いをはせることができます。TEAをはじめとした質的研究も、時間のかかる作業です。しかし、「最初の分かった」で終わりにせずに、他の可能性がないかを時間をかけて悩むことで、それまで気づかなかったことに気づくことができた時の喜びは、質的研究の一つの喜びではないかと思います。それはデータに埋もれる時間を経てふっと跳んで、(迷いつつも)景色が変わる瞬間として体験されるかもしれません。

 第3回大会のテーマは「TEAとともに跳べ」としました。安田(2005)からおよそ20年、本学会の会員数は、250名を越え、TEAのMLの登録者数は、1000名に迫る勢いです。第3回大会では、方法論としてのTEAについての理解を深め、その未来を見通す場になることを目指しています。公式の懇親会は開きませんが、2日目の昼休みに、ランチョンワークショップを開催し、会員間で新たな交流が生まれる契機にしたいと考えています。会員発表は、対面ポスターセッションとオンラインコメントセッション、そして、会員企画シンポジウムを予定しています。対面会場は、東京駅から20分以内で到着できるアクセスもいい武蔵野美術大学の市ヶ谷キャンパスです。ぜひ多くの皆様のご発表・御参加をお待ちしております。

TEAと質的探究学会 第3回大会実行委員長
荒川歩(武蔵野美術大学)